「くだものばあちゃんの庭」制作を終えて

軽井沢在住の画家による児童書のイラストの表紙絵

初めてsimecoさんの桃畑にお邪魔したのは2024年の4月末。まだ、ピンクの桃の花が残っていて、たんぽぽがたくさん咲いていて、いかにも春たけなわという頃でした。今回のイラストは、桃の木、プルーンの木、洋梨の木と3種類の果樹を題材に描くことになっていたのですが、いざ蓋を開けてみると、葉の形は?どうやって実がつくの?どんな虫たちがやってくる?など、知らないことだらけで、お話を書いた未由さんやファームの儀朗さんに色々なことを教えてもらいました。

ももの花のピンクとたんぽぽの黄色に囲まれて
simecoファームにて

そして7月。真っ青な夏の空の下、「くだものばあちゃん」チームのみなさんと桃畑で再会した時には、見事にももが実っていました。それもたわわに、枝がしなって地面につきそうなほど。小さな種だったアイディアが、どんどん本の形に成長していく私たちのプロセスと重なって感無量でした。

右から、simecoファームの小金澤儀朗さん著者の安田未由さん、
イラストのハインリクスかなこ、ブックデザインの柳沢明夫さん

今回のイラストのお話をいただいた時から5ヶ月間、私の頭の中には常に「くだものばあちゃん」が住んでいました。お話はフィクションだけれども、実在したおばあちゃんが題材となっているということもあり、「おばあちゃん」について色々考えることがありました。

軽井沢のアトリエにて

おばあちゃんの世界って、謎に包まれていると思うのは私だけでしょうか。私の記憶の中の祖母は、いつも朗らかに歌を歌い、朝まだ暗いうちから大量の朝ご飯をせっせと作り、何やらとっても楽しげだった思い出があります。でも、実際に祖母の家に行くのは年に数回。実のところ、普段何しているのか全然知らないのです!よく知っているようで、知らない。そんなおばあちゃんたちの、謎に包まれた部分が想像を掻き立てます。

そして、愛すべきおばあちゃんとの思い出を大事にしまっておくのは、ファンタジーの世界が最適な場所なのではないかと思い、今回のイラストのコンセプトを決めました。箱に開けられた楕円の窓から、そっとくだものばあちゃんの世界を覗く感じをぜひ楽しんでいただきたいです。

だいぶアナログな方法で、楕円の窓から見える箇所を確認しながら描き進める。

今回、児童書という初めての分野に挑戦させていただく私に、「かなこさんが楽しいと思うやり方で。」と最初から最後まで背中を押してくださったくだものばあちゃんチームのみなさんのおかげで、ずいぶんと自由に描かせていただきました。頭の中のくだものばあちゃんと対話しながら描く日々は、うまくいかずに苦しい時もありましたが、充実した幸せな日々でした。そんな楽しい気持ちが読者の皆さんにも伝われば嬉しいです。

愛蔵版「くだものばあちゃんの庭」
箱入り3冊セット

1: モモ編「はちのおひっこし」40ページ
2: プルーン編「四姉妹と四兄弟のけんか」36ページ
3: 洋なし編「夜のかくれんぼ」40ページ
サイズ判型四六 (128mmx188mm)
価格 2980円(税込)

小さめなサイズの可愛い本書は、お部屋の中に飾ったり、大切な人への贈り物にもおすすめです。箱の小窓からのぞく景色は、中の本を入れ替えることで、8月のモモ、9月のプルーン、11月の洋梨と、季節ごとに変化していくばあちゃんの庭をお楽しみいただくこともできます。

「「くだものばあちゃんの庭」制作を終えて」への1件のフィードバック

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール